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『上海』への道 ――― 傑作パズルゲームを生んだ車椅子の開発者 [レビュー]

shanghai.jpg
Shanghai screenshots (from MobyGames)

ここアジア・太平洋地域で、アクティビジョンは幾度となく『上海』のライセンスを許諾しているけれど、誰一人としてこのゲームをデザインしたのが西洋人であることを信じないんだ。
― アクティビジョン・ジャパンの社長を務めたビル・シュワルツの回想



スタンフォード大学の学生であったブローディー・ロッカードは、トランポリン運動中の不慮の事故により首の骨を折るという大怪我を負います。辛うじて一命は取り留めたものの、その後遺症は深刻でした。
頸椎損傷四肢麻痺 ――― ブローディーは首から下の自由を失い、残りの人生を車椅子と共に過ごすことを余儀なくされたのです。

退院の後もスタンフォードで学生を続けるブローディーは、コンピュータを用いた教育プロジェクトに関心を抱きます。
当時のアメリカの教育機関には、PLATOと呼ばれるシステムが広く普及していました。PLATOは元々1960年にイリノイ大学で考案されたものです。その最大の特徴は、オンライン機能を実装した点にあります。
電子メール、ニュースグループ、チャット、そしてオンラインゲーム・・・。70年から80年代にかけて、後のインターネットサービスの原型と呼ぶべき様々な試みがなされていました。

ハンディキャップをものともせずに精力的に学業をこなす側ら、ブローディーはPLATO向けに一つのゲームを生み出します。
中国で生まれたテーブルゲームの麻雀に使われている牌を積み上げ、ペアとなる牌を取り除いて山を崩して行くソリティア(一人遊び)タイプのゲーム。
『Mah-Jongg』と名付けられたその作品は、1981年に公開されるとすぐにPLATOで最も人気のあるサービスの一つとなります。

1984年にマッキントッシュが登場すると、早速ブローディーは『Mah-Jongg』の移植を試みます。そのプロトタイプが、アクティビジョン社のプロデューサーの目に留まったのは歴史の必然であったのかもしれません。
ほぼ無名のゲームであった『Mah-Jongg』は、新たに『上海』とのタイトルを付けられて1986年にApple II、マッキントッシュでリリースされます。
オリジナル版に引き続き、ブローディー自らが開発を担当。元々の『Mah-Jongg』は白黒表示でしたが、カラー表示に対応するために特製のスタイラスペンを口にくわえて麻雀牌を彩色したそうです。

最終的に、『上海』は全世界で累計1千万本以上も販売された歴史的作品となります。PCに家庭用機、業務用機、そして近年では携帯電話向けアプリなど数多くのプラットフォームに移植されていることは皆さんもご承知の通りです。
しかしその知名度に反して、このゲームが重度の障害を負った開発者の不屈の精神の産物であるという事実は殆ど知られていないのではないでしょうか?


(参考リンク)
Mahjong Solitaire
(参考文献)
○HIGH SCORE! the illustrated history of electronic games 2nd edition

(Amazonリンク)
上海

上海

  • 出版社/メーカー: サクセス
  • メディア: Video Game


(09/2/20) 本文訂正。ブローディーがスタンフォードで職を得たのは85年のことで、最初に『Mah-Jongg』を開発した81年当時はまだ学生であったようです。失礼しました。
タグ:ゲーム
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M_t

ちょうどシステムソフトで98版の上海が出たぐらいに、TRPGで有名な安田均さんのコラムで、初めてこのゲームを知りました。
そのコラムを読んで、英語の"Shanghai"と"shanghai"では大違いだということを知ったのですが、その後の生活の役には立ってません。
コラムの内容的にはアメリカの上海中毒のプログラマーが蒸発したとかで、もしや何者かにshanghaiされたのでは?・・・っていう話なんですけど・・・
その時、ゲームのネーミングは、何でそんなヤバイ事が連想されるワードにしたんだろう?って思いました。
by M_t (2009-02-19 23:08) 

Thunderbolt

はじめまして。
Shanghai を初めてプレイしたのは、たしか1987年です。
まだ Macintosh がモノクロで、メモリも 256 KiB だった頃です。
それ以来、PC-98, PC-88, X68K, TOWNS, FC, PCE, SFC, PS…と色々な機種でプレイしましたが、こんなバックストーリーがあったとは、まったく知りませんでした。


by Thunderbolt (2009-02-20 00:24) 

loderun

>M_tさん
"shanghai"の意味は知りませんでした。たった今、辞書で調べて驚いてます。
上にリンクを挙げたMahjong Solitaireによれば、ゲームに"Shanghai"と名付けたのはアクティビジョンのマーケティング部門で、その理由は「言葉の響きがよく、東洋的な雰囲気に合っていたから」だそうです。

>Thunderboltさん
はじめまして。
商用では第一作目となるマッキントッシュ版をプレイされたとは羨ましい!僕の『上海』初プレイはMSX2版だったかな?
このblogは、たまーにビデオゲームの変なネタを取り上げますので(笑)、これからもよろしくお願いします。
by loderun (2009-02-20 11:14) 

本名荒井

「上海」はたまに遊びますが、こんな誕生秘話があったのですね。
日本語版が出た当時、これを意識したのか、プロアマ問わず、麻雀牌を使ったコンピューター用パズルゲームがあれこれ登場したのを覚えてます。その後のパズルゲームに与えた影響は、「テトリス」に並ぶ物があるのかもしれません。
by 本名荒井 (2009-02-20 23:53) 

Thunderbolt

ぶっきらぼうな挨拶をしてしまい失礼しました。
ちょくちょく覗きに来ますので、こちらこそよろしくお願いいたします。
by Thunderbolt (2009-02-21 03:33) 

loderun

>本名荒井さん
そうですね。日常的な愛好者の数としては、我が国ではトランプよりも麻雀の方が多いですからね。フリーセルなんかよりも遥かに影響が大きかったかもしれません。
個人的には。ニチブツが業務用でリリースした四川省をよくプレイしていました。

>Thunderboltさん
え?別にぶっきらぼうだと思いませんでしたよ(笑)。
こちらこそ、誤った記述がありましたらツッコミお願いします。実はMSX以外のレトロPCはサッパリわからなかったりします。
by loderun (2009-02-21 18:27) 

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