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『E.T.』は史上最悪のゲームなのか? [レビュー]

 『E.T.』は、子供向けのゲームとしては良いかもしれないが、大人に薦めることができる点は皆無だ。(中略)映画のネームバリューを利用したアタリの試みは、熱烈なゲームファンに対する侮辱である。
 お金と時間を無駄にしてはならない。そして、もしもE.T.が母星に連絡できたときは、どうかこのゲームのことを教えないように。
―― 『Electronic Games』1983年3月号のレビュー


 『E.T.』のデザインは素晴らしくゲーム全体も楽しみを与えてくれるが、ユーザーが慣れ親しんでいた激しいアクション要素がふんだんに盛り込まれている類のゲームではなかった。(中略)
 本作に対する最大の苦情は、幾度となく穴に落ちることだ。そのことはハワード(訳注:『E.T.』の開発者)も問題点であると認識していたが、ゲームを完成させるまでの時間的猶予がなかったために改善されなかった。とはいえハワードは、ユーザーが何度かゲームをプレイすれば、穴の位置を覚えて容易に避けるようになると考えたのである。
―― 『Atari Inc. Business Is Fun』(2012年)




 今年の4月に、米国ニューメキシコ州アラモゴードの処分場より発掘されたアタリVCS対応ソフト『E.T. the Extra-Terrestrial』。
 11月にはアラモゴード市よりeBayに出品にされ、箱付き良品の最終価格は1500ドル以上にまで高騰。さらに先日には、スミソニアン博物館に収蔵されることが発表されたことは、皆様もご存知かと思います。

 そんなわけで、すっかり我が国でもその名が知れ渡ってしまった『E.T.』ですが、「史上最悪のゲーム」「アタリショックの元凶」などといったネガティブなイメージが先行するあまり、肝心のゲーム内容があまり理解されていないように見受けられます。

 よく知られている通り、『E.T』は1982年6月にアメリカで公開された同名映画を基にしています。映画の大ヒットを受けて、当時アタリの親会社であったワーナー・コミュニケーションズは、スピルバーグ監督との間で2500万ドルもの高額なゲーム化権契約を締結。さらにワーナーの意向により、『E.T.』は82年末のホリデーシーズンに発売することが決定されました。
 本作のデザインを担当したハワード・スコット・ウォーショウに許された開発期間は6週間。わずか2日間でゲームの基本デザインを考案し、残りの期間でプログラムを組み上げたと伝えられます。

 まず最初に僕個人の感想を述べると、『E.T.』は同時期のアタリVCSソフトと比較しても駄作の域を出ないと考えます。開発期間の短さに起因する練り込み不足は明らかであり、上に引用した『Atari Inc.』の見解はいくらなんでも褒めすぎでしょう。
 しかしその一方で、“ほとんどゲーム性のないひどい内容”*1“売り物にならないレベルの粗悪品”*2などといったしばしば目にする通俗的な評価に対して、誇張を通り越して悪質な事実誤認ではないかと思わずにはいられないのも事実です。

 『E.T.』におけるゲームの流れは、次の通りです。
 地球に取り残された異星人(=E.T.)を操作し、フィールドに散在する穴の中から通信機の部品を入手。敵となるFBIや科学者の追跡を振り払いつつ、迎えの宇宙船に乗り込むことができればクリアとなります。
 ジャンルとしては、アクション・アドベンチャーゲームに分類することができるでしょう。

 本作に対する批判として、説明書を読まないと理解できないルールや仕様がよく挙がります。それは否定し難い事実なのですが、以下の二つの点が見過ごされていると僕は考えます。

et_tips_left_small.jpg 第一に、『E.T.』には説明書に加えて、ペラ紙のTips sheet(プレイガイド)が同梱されていました。
「初めは難易度が最も低いモード3がおすすめ」「穴から脱出して画面が切り替わったらすぐにジョイスティックを上方向以外に倒すこと」といった基本的かつ重要な情報は全て記載されています。本作のルールのわかりにくさに対して、アタリは可能な限り配慮していたと言えるでしょう

 そして第二に、アタリが発売したVCS対応のアクション・アドベンチャーゲームとしては、『E.T.』の他に『アドベンチャー』(80年)や『レイダース・オブ・ザ・ロスト・アーク』(82年)が存在します。
 説明書を読まないとゲームにならないという点では同様である筈なのに、この2作に関しては秀逸な出来であるとの評価が一般的です。

 それでは、当時のゲーム雑誌での扱いはどうでしょう?
 冒頭に引用した『Electronic Games』に加えて、『Video Games』『Electronic Fun with Computers and Games』を確認してみましたが、残念ながらというべきか、予想通りというべきか、本作は否定的に評価されています。ただし興味深い共通点がありました。これら三誌全てにおいて、「このゲームは子供向けである」と指摘されているのです。

 実際のところ、『E.T.』はルールを把握してしまえばクリアはそれほど難しくありません。良く言えば「シンプルにまとまっている」、悪く言えば「奥深さに欠ける」とも表現できます。より複雑なゲームプレイを求めるユーザーを納得させることができなかったことは間違いないでしょう。

 加えて82年当時は、シューティングや『パックマン』のようなメイズアクション、『ドンキーコング』のようなジャンプアクションといったゲームに人気が集まっていました。そもそもの話としてアクション・アドベンチャーは、VCSユーザーが期待する中心的ジャンルではなかったのです。

 結果論的な部分もありますが、『E.T.』に関しては、幅広いユーザー層に受け入れられる内容であるべき年末ソフトとしての役割を果たせなかったことが、実態以上の悪評を産んでしまった原因の一つではないかというのが僕の考えなのです。
 現に海外のWEBサイト上では、当時に『E.T.』を楽しんだとの声をいくつも確認することができます。彼らは少数派であるかもしれませんが、一つの真実です。

 高額なライセンス料、500万本もの製造数に対して300万本以上が不良在庫と化した事実、そしてアラモゴードの埋葬伝説―――『E.T.』に対する評価は、単にゲームが面白いかどうかという問題だけでなく、商業的に大失敗した側面などが合わさり、いつしか虚実入り混じった言説が広まってしまったように感じます。
 1982年前後におけるアメリカの家庭用ビデオゲーム市場の趨勢はどのような状況にあったのか今一度整理した上で、『E.T.』を「史上最悪のゲーム」と呼ぶのは妥当であるのか、考えてみる必要があるのではないでしょうか?

(関連記事)
アラモゴードの『E.T.』発掘ニュースについて
アラモゴードの『E.T.』伝説、ついに完全決着!


*1 『それは「ポン」から始まった』 赤木真澄 (2005年)
*2 『家庭用ゲーム機コンプリート ガイド』 山崎功 (2014年)

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AVGNも言ってましたしね
by お名前(必須) (2015-01-06 11:45) 

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