So-net無料ブログ作成
検索選択

「ファミコン」商標は誰のものか? [レビュー]

グリル「ファミコン
「ファミコン」という商標は、そもそもシャープが持っていたものであることは知られているが(後に任天堂が同社より買い受けた)、なぜシャープが持っていたのか、その理由についてはほとんど知られていなかった。で、2004年11月、ODYSSEYが調査して出した結果がこれ!(1979年のシャープ新聞広告より)。


ファミコンの歴史 (from CLASSIC VIDEOGAME STATION ODYSSEY)



任天堂が1983年7月15日に発売した家庭用ゲーム機、ファミリーコンピュータ
もっとも一般的には、「ファミコン」の愛称で呼ばれることの方が圧倒的に多いかと思います。なにしろ発売より四半世紀以上が経った現在でも、ゲーム機全般を指す言葉として「ファミコン」との表現を目にするほどですから。
完全に普通名称として定着した感がありますね。

そんな「ファミコン」について、CLASSIC VIDEOGAME STATION ODYSSEYさんが非常に興味深い指摘をされています。なんと家電メーカーのシャープが、「ファミコン」という名のグリルオーブンレンジを発売していたとのことです。

僕自身、シャープが任天堂に先んじて「ファミコン」を商標登録していたとの話は以前に聞いたことがありました。
ただし、それは83年の「ファミコンテレビC1」(後述)発売の際に初めて申請されたものだと理解していたのです。元々、「ファミコン」という名のオーブンレンジが存在したとは驚きました。

しかし、よく考えてみるとこれは何かひっかかる話です。
商標法をご存知の方には説明不要かと思いますが、家電製品と家庭用ゲーム機では指定商品の区分が全く異なります。商標権の禁止権の効力が及ぶのは、あくまで同一または類似する商品となりますから、仮にシャープが家電製品で「ファミコン」を登録していたとしても、他者が家庭用ゲーム機において使用することは問題ないはずです。
果たして、シャープが登録した「ファミコン」商標とはどのようなものだったのでしょうか?
さっそく特許電子図書館で検索してみました。


まずこちらが、登録番号第1681105号、昭和56年(1981)3月30日に出願された「ファミコン」の登録商標。出願人は間違いなくシャープです。
また、指定商品が「民生用電気機械器具」とあるように、上に挙げたオーブンレンジ「ファミコン」の発売を受けて出願されたことは明白です。

そして、(ここが最も重要な点なのですが)この第1681105号の商標権は、現在でもシャープが保有しています


一方、こちらが登録番号第1832596号、出願日昭和58年(1983)10月31日の登録商標。
やはり、出願人はシャープです。
指定商品は「娯楽用具」とありますが、これは家庭用ゲーム機を含めて玩具全般が該当しますね。出願日が83年10月末という時機から考えると、「ファミコンテレビC1」との関連を疑わせます。

さらに登録情報を確認したところ、この1832596号の商標権は現在では任天堂が保有していることがわかりました。すなわち、シャープから任天堂に譲渡されたのは、83年に申請された娯楽用具を指定商品とする「ファミコン」商標となります。


以上をまとめるとこんな感じです。

(1) まずシャープは、「ファミコン」という名のオーブンレンジを発売。民生用電気機械器具(=家電製品)の区分で商標を出願。
(2) 83年7月、任天堂よりファミリーコンピュータが発売される。
(3) 83年10月に、シャープは再び「ファミコン」商標を出願。その対象区分は「娯楽用具」。
(4) 後に「ファミコン」商標は任天堂へと譲渡されるが、それは83年申請分の「娯楽用具」が対象となる登録商標であった。
(5) 家電製品の区分における「ファミコン」の登録商標は、現在でもシャープが保有。



さて、ここまでの事実関係を踏まえて、なぜシャープが娯楽用具の区分で「ファミコン」商標を登録したのかを検討してみます。

先に述べた通り、元々僕は「ファミコンテレビC1」の発売に伴い「ファミコン」商標は登録されたものと理解していました。 何故なら、既に「ファミリーコンピュータ」という商品が存在する状況において、「ファミコン」という略称を思いつくのは極めて容易だと考えられるからです。実際、任天堂社内でも「ファミリーコンピュータ」では長すぎる名称のため、「ファミコン」を商品名とする案が提案されていたそうです。

しかし、この説には重大な欠点があります。 それというのも、これまで名前を何度か挙げている「ファミコンテレビC1」ですが、実はこの商品の正式名称は「マイコンピュータテレビC1」です。少なくとも、発売直後の宣伝チラシには「ファミコン」の呼称が全く使われていないことがわかります。
(参考リンク)
マイコンピュータテレビC1 (from Lost Legend
ファミコンテレビC1 (from Wikipedia)

つまり、正式な商品名に「ファミコン」が含まれていない以上、C1を理由にシャープが娯楽用具の区分で「ファミコン」商標を出願する必然性が無いことになるのです。

この謎を解く鍵は、83年10月にシャープが登録した商標において、標準文字として「ファミコン」の他に「FAMICON」が申請されている点にあると僕は考えます。仮にこの商標が「ファミリーコンピュータ(Family Computer)」の略称に基づいているのなら、「FAMICOM」となるはずです。

そうなると娯楽用具の「ファミコン」商標は、シャープ自身が発売したグリルオーブンレンジ―――すなわち家庭用コンベクションオーブン(FAMIly CONvection oven)である「ファミコン」を意識したものである可能性が極めて高いと言えるでしょう。

繰り返しになりますが、家電製品と家庭用ゲーム機は本来、指定商品の区分が全く異なります。 しかし、例えばファッションブランドのシャネルやエルメスのように、著名な商標が本来の商品とは異なる区分においても防護的に商標登録が行われている例は枚挙に暇がありません。
それと同様に、自社製品のオーブンレンジと同一の愛称が想定されるゲーム機が他社から発売されたため、シャープは娯楽用具で「ファミコン」を商標登録した…と考えれば一応の筋は通ります。

ただし以上はあくまで僕の個人的な推測です。シャープが娯楽用具で「ファミコン」を商標登録したのは何故なのか、僕はどうしても確信的な理由を思いつくことができません。う~ん、謎だ。


ともあれ、結果的にシャープの行為は慧眼と言えるものでした。ファミリーコンピュータという本来の商品名以上に、「ファミコン」との言葉は時代を超えて今日も生き続けています。
さすが、「目の付けどころが、シャープでしょ。」をキャッチコピーにしていた会社だけのことはあるな、と深く納得した次第です。

…うん、我ながら強引なオチだけど、そういうことにしておこう(笑)。


(2015/04/12) 本文全体に加筆修正。


nice!(10)  コメント(13)  トラックバック(4) 
共通テーマ:ゲーム

nice! 10

コメント 13

僕

こんにちは。
すごい面白い記事でした。
レトロゲームは好きなのですが、
この話は全然知りませんでした。
by (2007-07-16 11:36) 

loderun

はじめまして、nice!ありがとうございました。
いや、商標の話なんてマニアックすぎて普通は知らないし、調べようとも思いませんよね~(笑)

このblogでは変なレトロゲームの話をすることが多いので、よろしければこれからもお立ち寄り下さい♪
by loderun (2007-07-16 20:35) 

とある筋の話

ファミコンそのものの開発は実はシャープが開発したものだと言う
話を以前(20年前くらいに…)にシャープの関係者から聞いたことが
あります。社内でこんなもの売れるものかと言うことで任天堂に売却
されたという話だったのですが…。実際に本当だったとしても絶対に
表には出てこない話ですね…話していた方はうちの上の連中見る目
無いから…とか愚痴ってましたが。アレ、ネタじゃなかったのかもな
by とある筋の話 (2007-07-16 23:08) 

80-cafe

ご紹介ありがとうございます。閲覧数が倍増したため、最初は何事かと思ってしまいました。ガンダム関係のネタを書いたため、ガンダムって人気あるのだな~などと思ってましたが、こちらで紹介いただいたからですね。ファミコン商標に関して特許登録まで追った記事というのは、ネット、書籍を問わず、ここが初めてなのではないでしょうか。そういう意味で画期的な記事ではないかと思います。また遊びにきますので、よろしくお願いします。
by 80-cafe (2007-07-17 06:04) 

loderun

>>とある筋の話さん
結論から言うと、それは誤まりです。
任天堂がファミコンを開発した経緯は、(退職者を含めて)既に多くの人によって語られています。そのような事実は存在しません。
百歩譲って仮に売却が本当だったとしても、別に違法行為でもなんでもないわけですから、「絶対に表には出てこない」と考える方が不自然ですね。

おそらく、元シャープの上村雅之氏がFCの開発に深く関われていたことや、任天堂が提示したカスタムチップの納入価格を(シャープを含めて)大手メーカーが断ったことが誤って伝わっているのでしょう。

>>80-cafeさん
いやいや、こちらこそありがとうございました。
上に書いた通り、今回のエントリーを思いついたのは80-cafeさんのおかげですよ。
つうか、僕もツインファミコンが欲しくなってしまいました(笑)
by loderun (2007-07-17 11:06) 

PD

もしかして商標譲渡の時期って
ファミコンタイトラーの発売時期とかぶらないでしょうか?
by PD (2007-10-12 09:11) 

loderun

特許電子図書館では名義人変更の履歴を確認できないので、商標譲渡の正確な時期は不明です。
ただし、シャープのファミコン商標は86年1月に登録されました。そして、86年7月発売のツインファミコンには、「ファミコンは任天堂の登録商標」との表記があるそうです。
以上のことから、商標譲渡の時期は86年初旬であったのではないかと考えられます。

ちなみに、「ツインファミコンはファミコン商標と引き換えに製造を許された」との説明をよく見かけますが、いまのところ信頼できるソースが見当たらないんですよね。
by loderun (2007-10-12 10:18) 

mitokon

ホントかどうかわかりませんがwikiによれば1983年発売のファミコンテレビには本当にファミコンを内蔵していたようですよ。
開発時点あるいは発売頃にシャープへのライセンスでファミコン内蔵テレビを発売することになってたんじゃないですかね?
邪推すれば、
そのときにシャープが商品名「ファミコン」を娯楽用具の商標登録

ところがそのことと関係なくちまたでファミリーコンピュータを「ファミコン」と呼ばれる

あわてた任天堂がシャープと交渉
って展開じゃないでしょうか・・

by mitokon (2008-12-01 04:23) 

loderun

Wikipediaを読むまでもなく、シャープのC1がファミコンを内臓していたことは承知しています。
私が問題にしているのは、「C1の正式な商品名は“マイコンピュータテレビC1”である。故に、当時のシャープが“ファミコン”を商標登録する理由がない」ことです。

尚、日経ネットに連載された「ファミコンはこうして生まれた」によれば、任天堂の山内元社長がファミコンという略称を気に入らなかったという証言があります。任天堂が“ファミコン”を商標登録しなかったのは、山内氏の意向であったようですね。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20081002/1019327/?P=5
by loderun (2008-12-03 12:28) 

mitokon

あ、そうですか。じゃ、C1の件は余計でしたね。失礼しました(^^;

うまく表現できなくてごめんなさい。
私が言いたかったのはファミコンの発売時期とC1の発売時期を考えるとファミコンの開発中の時点でC1の発売が決定してたであろうことからの憶測なんですが、ファミリーコンピュータ発売時は当然まだ「ファミコン」と呼ばれておらず、またC1は発売前で名称が確定していない。このとき確定はしてないが候補だった「ファミコンテレビ」のために「ファミコン」なる名称を商標登録したのでは?っと思ったんです。

まぁ、私の勝手な「邪推」です、「邪推」・・・失礼しました。
by mitokon (2008-12-09 06:48) 

loderun

確かに、ファミコン開発中の時点でC1の発売は決定していたと僕も思います。
ただ記事でも書いたように、シャープのファミコン商標の出願日は83年10月31日です。C1の名称が公表された日が、この前なのか後なのかが重要なポイントになりますね。

by loderun (2008-12-09 09:35) 

猫好き娘

今頃、トラックバック送信をするのは私くらいかな。
ちなみに、ファミコンについてはよく知りません。
by 猫好き娘 (2009-06-24 18:42) 

loderun

>猫好き娘さん
はじめまして。よく考えたら、ファミコンって来月で発売26周年なんですよね。うわー、もうそんなに昔になるのかあ(笑)
by loderun (2009-06-24 20:44) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 4

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。